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学会大会情報

東海体育学会第57回学会大会傍聴記

09.12.3更新

学会大会委員会

第57回東海体育学会大会が愛知学院大学日進キャンパスで開催された。昨年の秋に実行委員会が心身科学部健康科学科と教養部健康科学教室によって組織され、大会が準備されてきた。

昨年の第56回三重大学での大会から新たにポスター発表が加えられ、本大会でもこれを踏襲すると共に一般口頭発表を同一会場で実施した。研究発表を1つの会場で行うことによって、異なる領域にまたがった体育スポーツ関係者が多方面からのアプローチも見られ活発なディスカッションが展開できた。一方、学会大会抄録の記載、方法や研究結果と考察の問題に関する研究方法論についての指摘もあり、より一層綿密な研究計画と考察が求められた場面も見受けられた。

午後6時を回る中、ポスター資料の前で熱心な論議や情報交換が進み、今年度のすべての学会大会の企画が終了した。引き続き実行委員会を中心に参加者とともに懇親会が催された。大会実行委員会の労をねぎらい、研究発表と共に有意義な交流と懇親ができた。

学会大会委員会として本大会の企画運営にご尽力頂きました委員長佐藤祐造教授はじめ愛知学院大学実行委員会の皆様、研究を取りまとめ進めていただきました座長や司会者の皆様、貴重なる研究と発言を提供していただきました一般研究発表者の皆様、シンポジストの皆様に心から感謝申し上げます。

以下に座長の先生方から頂いた本大会の研究発表概要とその要旨を報告します。
(委員長 小林培男)

1 シンポジウムの概要と成果

この度の第57回東海体育学会大会のシンポジウムテーマは実行委員長でもある愛知学院大学心身科学部佐藤祐造教授の取りまとめと司会で「体育・スポーツが地域・社会に果たす役割」と題して開催した。シンポジストは、大学から内藤正和氏(愛知学院大学)、公益法人から和田昌樹氏(愛知県健康づくり振興事業団)、総合型地域スポーツクラブから榊原孝彦氏(NPO法人ソシオ成岩スポーツクラブ)、プロスポーツから松永 諭氏(名古屋グランパスエイト)といった立場からそれぞれの取り組みについてご講演をいただいた。

その成果の一つとして、それぞれがどのような取り組みを行っているのか、具体的な取り組み方法や目標(夢)について知ることができ、総合討論も活発なディスカッションが交わされた。今後、それぞれが不足している部分を補い合い、さらにより効果的に地域や社会に対して活動できればと感じた。(愛知学院大学 水藤弘吏)

2 一般研究発表の概要と成果
K1、K2、K3:口頭発表【バイオメカニクス分野】

今回の大会でバイオメカニクスの分野の発表は合計4演題あり、その内3演題が口頭発表であった。演者は最初の2人が東海学園大学の岡本 敦氏と上越教育大学の市川真澄氏のベテラン会員の発表であった。岡本会員の発表は砲丸投げの投射角の指導に関するもので、古くから言われてきた、投擲物の重量が大きい場合の人が加える力の方向と投射角が大きくずれることに着目し、どのように指導するかを論じたものである。市川氏の発表はスノーボードターンにおける脚の屈伸運動とエッジング角、荷重の関係についての基礎的研究である。スノーボードではスキーと異なり横向きに滑るため、つま先側(前面)へのターンと踵側(背面)へのターンにおいて、エッジングや荷重の動作が全く異なることに着目し指導法への資料を得ようとしたものである。3題目は若手会員の中京大学の木村健二氏の発表で、サッカーなどに見られる高速の切り返し動作(sidestepping)中の膝関節の動きを調べたものである。従来の動作分析のように、膝を屈曲進展のみの1自由度の関節としてではなく、障害発生の観点から、膝関節の動きを大腿と下腿の相対的動きとして6自由度で捉えようとしたものである。(名古屋大学 池上康男)

K4、K5:口頭発表【発育発達・運動生理学分野】演題K-4

プロサッカー選手にみられる下肢骨格筋の特徴的な発達がどの年齢段階で生じるか確かめようとして、中学1年生のサッカー選手を対象に検討した。この結果、この年齢ですでにプロ選手と同等の適応がみられ、スプリント能力に影響することを認めた。本発表は専門的なサッカートレーニングの開始を考える上で参考となる。演題 K-5: 最近、心循環系機能改善目標の一つとして血管拡張機能の向上が注目され、身体活動が効果的なことから運動の種類や強度について検討されている。藤田たちは運動だけでなく、これに低酸素刺激を加えることにより血管拡張能がより促進される可能性を報告した。(豊田工業大学 斎藤満)

K6、K7、K8、K9、K10:口頭発表【体育科教育学・体育方法分野】

このセッションでは、これまでほとんど発表がなかった体育科教育学の分野から4点及び体育方法学分野から1点の発表がされた。特に前者は現場教師の実践報告、大学院生の修論の中間報告と思われる内容であったが、体育科教育学の研究の一端を参加者に紹介し、研究分野の理解につながるという点で成果はあったと思われるものの、発表のどれもが研究の基本的な手続きの検討が不十分であり、フロアから研究の方法から内容、結果に関わってその「根拠」を問う質問が寄せられた。併せてフロアから抄録の記載方法など基本的な発表準備の問題も指摘があった。発表者には今回の経験を教訓としていただき、学会としては今後の学会における発表手続きについての検討が求められる。(日本福祉大学 吉田文久)

K11、K12、K13、K14:口頭発表【健康づくり・測定評価分野】

最初の2題は、生活習慣指導による健康改善効果を検討した研究でした。残念ながら両演題ともに著名な改善効果は得られなかったようでしたが、逆に生活習慣指導の問題点が浮き彫りとなり、今後の研究の方向性が示唆されました。3題目は小学生の休み時間のすごし方についての調査結果でした。休み時間には積極的に身体を動かして欲しいという発表者の思いは理解できましたが、具体的な対策については今後の検討課題に留まっていました。最後はサッカーJリーグチームに対するニーズに関する研究でした。私にとりましては新鮮な発想の研究でしたが、スポーツの社会貢献を考える場合は、こういった研究も必要だということが理解できました。どの演題にもフロアからも活発な質問や意見があり、有意義なセッションでした(愛知学院大学 大澤功)

P1、P2、P3、P4:ポスター発表【発育発達分野】

ポスター発表は、ポスターの前で発表時間3分とし、質疑応答は全体終了後に各自のポスターの前で行うこととした。3分の持ち時間の中で目的、方法、結果、考察を簡潔に述べることはかなり難しく、途中で終了となった発表者もいた。また、3分の時点でちょうど終了した発表者には拍手がわき起こった。発表内容はP1では男子中学生の3年間の形態および体組成の変化と体力との関連から、握力、立ち幅とびの能力は身長および筋肉量の変化に依存することや体脂肪の増加は走能力の低下に関わることが示された。他の3題は韓国女性を対象とした研究で、P2では中学生のBMIの判定から分類した痩身タイプの20mシャトルランで有意差が示された。また、P4ではBMIの判定から分類した標準タイプで、脂肪過少群が20mシャトルラン、上体起こし、腕立て伏せで優位に優れていたことが示された。P3では韓国一般女性を対象とした研究から低身長タイプに初経遅延が多いことが示された。全体の発表を終えた後は活発に討論がなされた。(南山大学 池上久子)

P5、P6、P7、P8:ポスター発表【運動生理学・バイオメカニクス・体育社会学分野】

このセッションのポスター発表は、運動生理が2題、バイオメカニクスが1題、体育社会学が1題であった。 運動生理では自律神経に関する内容、筋横断面積と骨強度との関係について、バイオメカニクスでは人工芝に関する力学的指標について、体育社会学では運動教室の実践例についてご発表していただきました。発表時間が3分と、短い時間の中で先生方には内容を簡潔に述べていただきました。成果としましては、ヒトの生理的応答から人工物、実践例に至るまでの研究について知見を得ることができました。個人的には、自律神経系に関する筋肉痛の影響について興味を惹かれ、関心深く発表内容を拝聴いたしました。(愛知学院大学 水藤弘吏)

(写真は、第57回大会のポスター発表後の自由討論の様子)